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『旅人と二つの財布』
ある旅人は、二つの財布を持っていた。
一つには金貨を入れた。
もう一つには時間を入れた。
若い頃、旅人は金貨の財布ばかり大切にした。
一枚でも多く集めようと、
朝から晩まで働いた。
ある日、老人が尋ねた。
「その金貨で何を買うのだ?」
旅人は答えられなかった。
それから旅人は、
金貨を数える前に時間を数えるようになった。
二時間早く仕事を終え、
本を一冊開いた。
一杯のコーヒーを飲み、
異国の言葉を口にした。
不思議なことに、
金貨は以前ほど減らなかった。
むしろ、心が豊かになるほど、
人生は静かに満ちていった。
老人は微笑んで言った。
「金貨は使えば減る。
だが、
時間を使って得た知恵は、
誰にも盗まれず、
利息をつけて戻ってくる。」
旅人は最後に気づいた。
貯めることは、生き延びるための知恵。
使うことは、生きるための知恵。
そして、
真の富とは、
金貨の多さではなく、
『今日は良い一日だった』と言える日の数である。